« 人類の起源と進化 | メイン | 久々のグルメ三昧 »

2007年7月10日

 ■ ミトコンドリアと生きる

book5.jpg
著者:瀬名秀明 太田成男

「ミトコンドリア」とは、真核生物(動物・植物)の細胞内にある小器官であり、生命活動のエネルギー源である
"ATP"を生産する。

1970年代、リン・マーギュリスという生物学者が「細胞内共生説」を発表し話題になった。
ミトコンドリアが細胞核のDNAとは違う、独自のDNAを持ちまた、細胞の分裂周期とは別に
ミトコンドリア独自の分裂・増殖を行うことから、大昔に別の細胞が入り込んで共生したと考えた。
時期的には約16億年前とも言われている。
共生といっても、ミトコンドリアDNAの大部分を細胞核に移し、宿主と切り離せないほど密接に関係し、
また、宿主もミトコンドリアが提供してくれるATPを大いに利用している。
(ATP自体はミトコンドリアがなくても細胞内で生成できるが(解糖系)効率は悪い。)

この考えはかなり反響を呼んだらしく、生物は時間をかけて徐々に進化するというダーウイニズムとは違い
進化論の在り方にも影響を与えたようだが、今現在ではこの考えが広く支持されている。

ミトコンドリアは、やはり「呼吸」、しかも「酸素呼吸」という大きな役割を持っている。
高校の生物学の教科書にも載っていることだが、
まず、細胞質内でブドウ糖が解糖されてピルビン酸に変わる。この時に1ブドウ糖から2つのATPが生成される。
これを解糖系といい、ミトコンドリアは関与しない。
ここからピルビン酸がミトコンドリア内に入ると
ピルビン酸 → アセチルCoA → クエン酸回路 → 二酸化炭素 と反応する。
                        ↓
                        → 水素原子を別に引っこ抜き
                              ↓
                           電子伝達系
                              ↓
                           ここで酸素にぶつけて → 水を生成
                              ↓
                           大量のATP(36-38個)

実際にはもっとややこしくて複雑だが、簡単に書くとこうなる。

酸素を使うところがミソなのだが、30億年前の太古には、シアノバクテリアが光合成を行い酸素を発生
させていた。酸素は酸化作用が強くてそれ自体が生物にとっては毒物なのだが、その強い酸化作用を
逆手にとって積極的に活用して酸素呼吸でエネルギーをとり出している。
酸素を扱う以上、活性酸素の発生がどうしても避けられず、活性酸素が細胞を傷つけ、
老化の原因にもなっている程だ。
そこで、活性酸素の影響を少しでも減らすために、ミトコンドリアはそのDNAの多くを宿主の細胞核に移動した
というのだから、なかなかドラマチックでもある。

余談になるが、ミトコンドリアの研究者にはノーベル賞受賞者が割と多い。
欧米の科学者(生物学者)には、このノーベル賞受賞を目的にする研究者が多い(そうだ)。
実際にノーベル賞受賞のためにミトコンドリアの研究をする学者も多いらしい。
日本ではあまり考えられないが欧米ではそんなものかもしれない。
(ちなみに、古生物学ではノーベル賞の対象にはならない。)

日本だとニュートリノの小柴教授や、島津製作所の田中氏のように、ノーベル賞を目指したわけではないが
研究が認められて受賞したというタイプが多いのだと思う。

たとえは悪いが、天体写真でも、「最優秀」を目指して、そのために努力するタイプと、
応募したら、たまたま「最優秀」になったということの違いと同じなのかもしれない。
日本では、個人的な考えだが後者の割合が多いのではないかと思う。
としたら、国民性のことを考えると、外国の天文雑誌でフォトコンをやると、賞狙いで命を懸ける天文家が
大勢出てきそうだ。

投稿者 pikachu7500 : 2007年7月10日 21:30

コメント

こんばんは
高校時代にミトコンドリアをはじめ生物の細胞内の組織には結構興味がありました。地学も好きでしたが物理/
科学が好きになれず結局文系の大学を目指しました。今となっては物理もまじめにやれば良かったなんて思ってます(笑)国内フォトコンの最優秀も良いけど、世界の天体写真家が目指す究極の称号は:最近始まったSBIGのこれかもしれませんよ。機材・ロケ−ションのベ−スになるレベルがすでに余りに高すぎて日本人の入賞はかなり厳しいと思いますが。

http://www.sbig.com/sbwhtmls/whatshot.htm

投稿者 YASU : 2007年7月11日 23:39

YASUさん、おはようございます。
私は文系がダメで理系に進みました。卒業してから学問とは関係ない仕事をしてますが、科学系の本は好きでいつも本屋でいろいろ漁ってますがなかなかおもしろい本が少ないです。

SBIGのHP、有名どころの人が数名いらっしゃいますね。画像も素晴らしすぎるというか、ハイレベル過ぎて日本では太刀打ちできません。アメリカの絶好のシーイング・透明度の良さはお金では買えません。移住するしかないのかな。

投稿者 ここの管理人 : 2007年7月12日 06:54

このエントリーのタイトルを見たときに頭に浮かんだのが
「パラサイト・イブ」でした。

瀬名さんの本はこれしか読んだこと無いんですけどね。


投稿者 シナモン : 2007年7月12日 12:02

シナモンさん、こんばんは。
「パラサイト・イブ」の瀬名さんの本です。
本文中にもパラサイト・イブの話が少しだけでてきますが
かなり学術的な内容の本です。

投稿者 ここの管理人 : 2007年7月12日 20:25

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)