2007年7月 7日
著者:平山廉
中生代といえば恐竜。
恐竜についての科学的な解説がしてあるが予備知識がなくても読みやすいと思う。
著者はカメの専門家であって恐竜の専門家ではないが、カメの中生代の化石を研究するうち、
同じ時代の同じ爬虫類であることもあってこの本を書いたらしい。
恐竜といっても一般的に知られているイメージは、キリンのように首を長くあげているようなイメージがあると思うが
実際にはあのような格好ではない。
首から尾までほぼ水平であり、尾は決して地面に付くことはないし、首もまっすぐでぐにゃりと曲がることはない。
私も知らなかったのだが、古生代は哺乳類型爬虫類(矛盾したような名前だが)が陸上生物の全盛期だった。
格好は大型トカゲみたいな感じで恐竜にも見えないこともないが、これは恐竜ではない。
哺乳類の祖先であって爬虫類ではない。
哺乳類は単弓類、爬虫類・鳥類は双弓類である。
違いは、頭骨の眼窩の後方に穴(側頭窓)が1つ(単弓類)か2つ(双弓類)かで分類される。
人間も含む哺乳類は単弓類であり、現生の単弓類は哺乳類しかない。
古生代末期にはこの哺乳類型爬虫類の全盛期であったが、中生代(三畳紀、ジュラ紀、白亜紀)の三畳紀
には衰退する。その代わりに、爬虫類の恐竜がとって変わるように勢力を伸ばすが、三畳紀の恐竜は地上を
支配するまでにはいっていない。
ジュラ紀になると恐竜の全盛期を迎え、白亜紀まで続く。
恐竜の分類としては大まかに以下に分類される。
A.鳥盤目(骨盤の形状は鳥型、草食恐竜)
鳥脚類(イグアノドン、ハドロサウルス等)
周飾頭類
角竜類(トリケラトプス等
パキケファロサウルス等
装盾類(ステゴサウルス等)
(といった感じで、外見がごてごてしたり頭がでかくて角があったりする)
B.竜盤目(骨盤の形状がトカゲ型、鳥類もトカゲ型で鳥盤目とは違うのだ)
竜脚類(草食で大型のものが一般的な恐竜であろう)
ブラキオサウルス、ディプロドクス、マメンチサウルスといった大型のものが多く
外見は飾りはなくシンプルである
獣脚類(肉食恐竜)
アロサウルス類、ティラノサウルス類といった、肉食恐竜の典型的なもの
マニラプトル類(オビラプトル類、ドロマエオサウルス類とった半分鳥みたいなもの)
鳥類(始祖鳥、より鳥に近い近縁のもの、新鳥類)
著者はこのように分類して、特に鳥類は獣脚類に括っていて恐竜の中の一派としている。
さらに、マニラプトル類も脳の大きさや羽毛があることなどから鳥類として扱ってもいいと主張して
恐竜の中でも特殊な扱いとしている。
著者は中生代カメの研究で当時の環境面がどうだったかということも考察している。
大気中の二酸化炭素濃度が現在よりも非常に高く(約18倍)気温は高温で陸上は乾燥した砂漠地帯
も多かったとしている。平均気温は約30度以上、低緯度地域は暑いが今と変わらない程度で、特に極地の
気温が高かったのではないかとしている。
カメは卵から孵化するときの気温で性別が決まり、カメの化石分布でもある程度の気温の目安がつくらしい。
中生代はほぼ気温の高い時代が長く続き、今から約9000万年前の白亜紀中期が一番気温が高く
その後気温が徐々に低下するが中生代末でも今よりも世界の平均気温は10度以上も高かったいう。
この気温が高い時代が長く続いたために、体温は(外的要因で)高く保てて爬虫類であっても活動しやすく
大型化することができたとしている。
哺乳類は中生代にもいたがネズミ程度の大きさで大きくなれなかった。高温環境では哺乳類はその真価を
発揮できず、気温が低下した第三紀(氷河時代も含む)で進化多様化が進んだのだという。
恐竜の絶滅は中生代・白亜紀末期であるが、1980年代、隕石の衝突説がにわかに脚光を浴びた。
著者は、隕石衝突が実際にはあったのだろうと認めてはいるが、これが主因ではないとし、環境変化を
あげている。中生代にはそれまでの裸子植物から被子植物が台頭してくる。植生の変化、
大気中の二酸化炭素濃度の低下(植物だけではなく、海生生物の消費もある)に伴い気温の低下
で徐々に衰退していった。恐竜の種・属数も白亜紀中期を頂点にどんどん数が減ってきている。
海生のアンモナイトにしても、白亜紀中期から種・属数が恐竜と同じくどんどん減ってきているし
白亜紀末期には、ニッポニーテスのようにいびつにとぐろを巻くような変種?まで出現し隕石衝突がなくても
恐竜やアンモナイトは滅びる運命にあったのだろうとしている。
この本はなかなか面白くて何回も読み返している。一度読んだだけでは内容が完全に理解できない。
繰り返し読むことで内容も理解でき、知識もどんどん深まる。
投稿者 pikachu7500 : 2007年7月 7日 21:00