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2007年7月 5日

 ■ ワンダフル・ライフ

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著者:スティーブン・J・グールド

古生代カンブリア紀で爆発的に生物が進化・多様化した。
中でも有名な化石産地として、カナダ・ロッキー山脈の山中から発掘されたバージェス頁岩が挙げられる。
1900年代初頭、アメリカ人の古生物学者、チャールズ・ウオルコットが発掘し、数万点にも及ぶ化石が
スミソニアン博物館に運ばれたが、本格的な研究はあまりされなかった。

1970年代初頭から、イギリス・ケンブリッジ大学のハリー・ウイッチントン教授がこのバージェス頁岩の
本格的な調査に乗り出す。ハリー・ウイッチントン教授はマーレラ、ヨホイアの研究に着手し、この本の
表紙にもあるオパビニアを発表して多くの学者に笑われた。
何しろ目玉が5つ、頭部にある触手でえさを取り口に運ぶ、この奇妙な生物が常識はずれであったこともあるが
カンブリア紀の奇妙な生物を世に知らしめる機会でもあった。

この教授もいろいろ忙しく、本格的に研究に励んでくれる若い大学院生を2人70年代半ば頃に採用した。
アイルランド人のデレク・ブリッグスとイギリス人のサイモン・コンウエイ・モリスである。
教授と2人の大学院生がこの後、バージェス頁岩を本格的に調査しカンブリア紀の生物を暴き出すことになる。

こういったことを、この本はいろいろエピソードを交えながら紹介している。
著者のスティーブン・J・グールドは、アメリカの有名な古生物学者でイギリスの教授やその門下生とも深い交流
があった。
研究そのものはイギリスの教授やその門下生が専門的に行い、その研究結果をもとに、著者はその意味を考察した。
つまり、生物は進化の初期に多様性が一番大きく、結果として生き残れるかどうかは運命しだいであるという、
いわゆる「がらくた箱理論」を展開する。

とまあ、まとめると、こんな感じの内容ではあるが、ハッキリ言って読みにくい。
だらだらと冗長な感じで書かれているので要点がわかりにくいのもある。
しかし、中にはイギリス人の研究の途中の様子やアノマロカリスの正体を暴き出す過程などは読みごたえがある。

アノマロカリスは、1800年代に化石が発見され、ファイティーブスによって「奇妙なエビ」という意味の
アノマロカリスという名前が付けられた。
アノマロカリスはエビのような触角部分だけの化石でそういった名前が付けられたのだが、別にペイトイアという
丸いクラゲみたいな化石との関連性は見いだされずに約100年が経過した。
デレク・ブリッグスは、アノマロカリスの研究に取り掛かっていたのだが、ハリー・ウイッチントン教授は
アノマロカリスの化石を解剖して、ペイトイアという化石は実はアノマロカリスの口であったことを暴き出す。
そうしてアノマロカリスの正体がかなり明らかになってくるのだが、このあたりの記述は読んでいても面白い。

投稿者 pikachu7500 : 2007年7月 5日 22:06

コメント

カンブリア紀のアノマノカリスやオパビニアなんかは僕の大好きな生物です。いまでも恐竜なんかよりずっと面白いと思います。この頃は本当にユニ−クな生物が多かったようですね。三葉虫もアナマノカリスにかじられていたようですが、そのかじられ方から独特の口の構造をしていたようですね。エウロパの海中にもこんな連中が巣くっていたら楽しいのですが。

投稿者 YASU : 2007年7月 6日 00:57

YASUさん、おはようございます。
カンブリア紀の生物ファンがいらっしゃったとは非常にうれしいです。
恐竜もあれはあれで面白いのですが大きさを除けばまだ常識が通用します。
約5億年前の生物にはとんでもないものも多くて恐竜以上に面白いのは確かだと思います。

アノマノカリスにかじられた三葉虫の化石からは、右側にかじられた割合が多いから三葉虫は右利きだったとか説もあります。あとNHKの番組でNHKの技術陣が作ったアノマノカリス模型をイギリスの教授に見せて発泡スチロールの三葉虫模型を食わせて経常がどうだとかの番組を見たことがあります。

投稿者 ここの管理人 : 2007年7月 6日 07:28

私は全然カンブリア紀の生物ファンではないのですが、
学生の時に発泡スチロールを削ってオパビニアの模型を
作ったことがあります。
だからなのか?オパビニアに妙に親近感が沸きます。

投稿者 シナモン : 2007年7月 6日 19:02

シナモンさん、こんばんは。
オパビニアの模型ですか、作りにくいと思いますが、なぜそのようなものを作ったのか?謎ですね。
きっと関係者にカンブリア紀のファンがいらっしゃったのでしょう。

投稿者 ここの管理人 : 2007年7月 6日 21:13

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